αと嘘をついたΩ・二巻・~サンプル~

オメガバースサンプルです。神無月柊α、紫苑美月Ω

二巻途中の挿絵

小田原のお堀から池を眺めながら、物思いにふける美月

第三章・共生

霜月・半同棲

 朝はもう、ぐっと冷え込むようになった。外の草を踏めばシャリっと音がする。お互いに好きあっているのだと自覚してから、元々甲斐甲斐しかった神無月が、更に世話を焼くようになった。

「好きだ」

 無節操に好きだと言ってくるのにももう慣れて、つい適当にあしらってしまう。

「ハイハイ。僕も、です」

 相変わらず適当だ、とコーヒーを入れながらぶつぶつ文句を言う神無月に、これでもかと甘ったるいおはよう、のキスをする。

 不意打ちに弱いのだという事も、この一か月半同棲をしながら判った出来事だ。

 ガシャーン。キッチンで朝ご飯を作っていた神無月の手元から、金属のボールが床に落ちた。

「何しているんですか……」

 呆れる紫苑に、神無月は冷たい目を向け、わざとだ、と冷ややかな声を返してきた。

「人を意地が悪いみたいに言わないで下さいよ。キスしたかっただけですよ」

「美月……」

「キス、しない方が良かったですか?」

「そんな事は言っていない。嬉しいに決まっている。でも不意打ちは卑怯だぞ」

 実は照れ屋なのだと言う事も、わかった。

段々と尻つぼみになる声が可愛くて、こんな時だけは自分の方が優位だと、ちょっとした優越感を覚えていた。

「嚙みたい……」

 神無月はあれから幾度も、そう言う様になった。

「嫌ですよ」

 その度に、紫苑は毎回、同じ事を答えている。アルファがオメガの項を噛む。理性で行う結婚以上に、本能のなせる業だと思っているし、神無月の事を心底愛している紫苑にしてみれば、出来損ないの自分なんかが番ったところで、末路は見えていた。何より神無月の心変わりが怖かった。

「まだそんな事を言っているのか」

 紫苑の首には、プロテクターが巻かれていた。

↓αと嘘をついたΩ・1巻

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0BXX9NQPK/ref=dbs_a_def_rwt_hsch_vapi_tkin_p1_i1

美月の為にタルトタタンを作る神無月柊

この記事を書いた人
赤井ちひろ

5月24日生まれ
出身は箱学のある、神奈川県
弱虫ペダルで小野田坂道が落車した市民会館の前を通って、日々通学。
この頃から、きっと未来の荒北靖友推し【新荒】は決まっていたと思われる。
始めてBLに目覚めたのは、木原敏江先生のアンジェリク、この中に男色の公がいるのです。
木原先生の描かれる漫画では、断トツ、紫乃さんが好き。
未だに、紫乃様ティーシャツ探しています。
そしてツーリングエクスプレスにド嵌りしたのが、14歳。
今も勿論愛読しています。
学生時代は早弁を得意とし、美術室にこもる毎日。
玉川大学演劇専攻卒。
その間にアルバイトをしていたイタリアンが私のカメリエーレ生活の原点。
いまでも、イタリアンを専門に生きるBL作家☆彡
料理やワイン、サービスマンの絡む現代BLが日々のご馳走。
趣味・ロード【観戦】&洋南、箱推し・宝塚観劇【推しは高汐巴さん】・そして空気を吸うように、BLを日々過剰摂取しています。
SМ、拗らせ、純愛、調教、オメガバース大好きです。
ドエス甘々攻め×ツンデレ受けが人生のメインテーマ
読んでいただけたら嬉しいです

赤井ちひろをフォローする
BL小説
赤井ちひろをフォローする
赤井ちひろのBL生活、溺愛、執着、オメガバlove
タイトルとURLをコピーしました