BL・東條大和の独り言【愛の鎖が解ける先に】

好きだったから、僕の事なんか忘れられても、大和さんが幸せだったなら、大切な人が笑ってくれるなら……そう思って、僕は三淵葵を捨てたつもりなのに……。悪だ。僕は大切な人をずっと騙していたんだ。

【記憶を失うということは、世界から取り残されることだと思っていた。
けれど目の前のこの子だけは、まるで世界のすべてから俺を取り戻そうと、必死に今を耐えているように見えた。
何十年も一緒に生きていたみたいな顔で、大和さん、と俺の名前を呼ぶ。
昨日まで俺は君を忘れていたし、なんなら今だって君のことを思い出してはいない。
随分と薄情な男だよ。俺がそういうと、君は目に涙を浮かべ、必死に首を左右に振っていたね。
思い出せない。
それなのに、胸が苦しい。自分勝手な男だ。
俺が申し訳なさそうに君に名前を聞いたとき、君の目は大きく見開かれ、嬉しそうに笑っていたんだ。

名前を呼ぶのは愛撫と一緒なんですって。葵君にそういわれた時、俺は何を考えたと思う?一生君の名前だけを呼んで生きていきたいと、思ったんだよ。

——きっとこれは、
忘れてしまったはずの恋の、最後のピースだ】


記憶喪失って「過去を忘れること」じゃなくて、**“自分を形作っていたものが、突然空白になること”**なんだと思う。とても怖い感情だ。今回三淵は、究極の選択をした。それはいつかを信じて今を捨てることに他ならなかった。

  • 好きだったはずの人を、好きだった理由がわからない
  • 大切だったはずの時間を、思い出せない
  • でも相手だけは、変わらず自分を知っている

東條大和に忘れられてしまう三淵の切なさが、もう感情の地雷原。


BLで拾える感情の核

  ① 「知らないはずなのに、心だけが覚えている」

  • 名前を呼ばれると胸がざわつく
  • 触れられると、理由もなく落ち着く
  • 声だけで安心してしまう

    恋は記憶じゃなく、身体や感情に染みついているものだということがわかる。

  ② 「愛していたのは過去の俺か、今の俺か」

  • 相手は「前の俺」を知っている
  • そして俺は「今の君も昔の君も知らない」
  • 今の自分は、その人を“違う誰かと思い込み”俺は今のお前の存在を微塵も思い出さない。

    お前はきっと思い出を語りたかったのだろう。
    名前のあった関係が一瞬で消えてなくなる、地獄に落とされた瞬間。
    でも語れば、今の関係を壊してしまう
  • きいたよ。すべてを捨てたのだよと、あとから俺とお前をよく知る人物から苦しそうに話された。
    ごめんよ。
    「優しさが、時々残酷になる」
    「無理に思い出さなくていいよ」
    「今のお前のままでいい」
    これは、優しさなのに、切なくてつらい
    だって愛していた証拠を、自分だけが抱えて生きていかなければならないから。

    ④ 「選び直す恋」
    記憶喪失ものの救いって、ここだと思う。
    過去がなくても
    もう一度、同じ人を選ぶ。
    いや、選んで欲しいのかもしれない。ただ純粋に心だけが向かう先。
    それは
    運命でも執着でもなく、“意志としての恋”
    それが東條大和と三淵葵の恋だった。

あらすじ
銀座で働く三淵葵は職場では“社食のアイドル”と呼ばれる存在だった。
彼には密かな想い人がいる。顔も名前も知らないが、いつも「ありがとう」と声をかけてくれる――“ありがとうの君”。
ある夏の朝、葵は新宿二丁目で出会った男・東條大和の部屋で目を覚ます。
強引で、支配的で、それでいて奇妙なほど優しい大和。
彼の言葉遣いや声は、葵の想い人と酷似していた。
やがて葵は、大和の職場に呼び出される。
そこにいたのは、昨夜の男であり、そして――“ありがとうの君”でもある東條大和だった。
互いに正体を完全には掴めないまま、二人の距離は急速に縮んでいく。
そのころから東條に異変が現れる。都度頭痛を訴える東條。ある日駐車場で倒れた東條は病院に運び込まれ、目を覚ますと数年の記憶を失っていた。
かつて東條には紬という恋人がいて、従順で、意思を持たず、ただ与えられるままに生きるはずの存在。だが、ある日を境に紬は「考え」「話し」「選ぶ」ようになる。
記憶、年齢、時間、そして名前。
少しずつズレていく現実の中で、大和は“今、隣にいる存在”が本当は誰なのかを疑い始める。
辿り着いた青山墓地。
白い墓石に刻まれた名前を「読め」と告げられた瞬間、
葵の中で張り詰めていた何かが、静かに、しかし決定的に崩れ落ちる。
愛とは、記憶か。
身体か。
役割か。
失ったはずの恋人と、出会ってはいけなかった“今”の恋。
絡まり続けた愛の鎖が解けた先に待つのは、
救済か、それとも――。

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この記事を書いた人
赤井ちひろ

物書き・基本はBL。
オメガバース、男性妊娠、特殊性癖をこよなく愛する腐女子です。
料理×酒×BL×リーマン大好物。
J庭・文学フリマをベースに、二次小説で弱ペダの新開隼人×荒北靖友を書いています。年間10回ほどのイベント参加。
電子書籍出しています。

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